コットン生地になる最初に糸ができるまでを知りましょう。まずは綿が糸になるまでの流れを見ていきましょう。

1. コットンの生産国

 コットン(綿花)の原料は、綿花(ワタ)というアオイ科の植物の種子からとれる繊維です。種のまわりにふわふわとした繊維がまとわりついている植物の姿を見たことがあるという方も、いらっしゃると思います。その繊維がたくさんの工程を経て、私たちの生活に身近なコットンに生まれ変わります。実は、現在の日本ではコットンの原料についてほとんど生産されていません。明治時代までは和綿という名前で生産されていたのですが、現在ではゼロと言ってもよいほどです。

コットンの生産されているほとんどは、発展途上の国や地域です。2017年のコットン生産量が多かった国を見ていくと、1位がインド(6,314千トン)、2位が中国(5,824千トン)、3位がアメリカ(3,876千トン)、4位ブラジル(2,885千トン)、5位パキスタン(1,089千トン)となっています。中でもインドでのコットン生産量は近年増加してきていて、以前1位だった中国を抜いて現在ではトップです。世界のコットン生産量の約27%はインドが占めています。また、農薬や化学肥料を使わないオーガニックコットンに関して言えば、その半数以上がインドで生産されたものになっています。

[出典:USDA「World Markets and Trade 2021]

2.綿花栽培から紡績工場へ

コットンとなる繊維は、アオイ科の植物であるワタの種子から取ることができます。ワタの生育環境は、霜が降らない季節が長くあり、温暖な気候と600~1200mmの降水量が望ましい、ある程度温暖で湿潤な地域ということになります。現在の主要な産地は、中国、インド、アメリカ、パキスタン、ブラジルです。

綿花生産は、綿花が育ったら、種子のまわりについたふわふわとした繊維を取っていきます。取った繊維は、この段階で長いものと短いものに分けられます。長い繊維は「リント」と呼ばれ、これを原料として世界各地の紡績工場で糸を作っていくことになります。糸にすることができない短い繊維の方は、クッションの中綿などに使われています。 種子から回収された繊維は、リントと呼ばれる長い繊維と糸にできない短い繊維に分別されます。一般的な綿繊維の長さは28mmほどですが、35mm以上のものを特別に超長綿と言い、その肌触りや光沢から高級コットンになります。

紡績工場に運ばれたリントは、まずゴミや不純物を取り除いた上で、繊維のかたまり(ラップ)にされていきます。ラップはきめの細かい串に通され、繊維の向きを揃えながら棒状にされていきます。この棒状のものは「スライバー」と呼ばれます。いくつかのスライバーを一つにまとめ、強く引っ張って繊維の向きをさらに整えてという工程を何度か繰り返していくと、「粗糸」というひねりの弱い糸が出来上がります。この粗糸を使用目的に合わせてさらに強く撚っていく工程(精紡)を経ると、糸の完成です。あとは、この糸を織っていくことで、コットン生地が完成します。 多くの場合収穫された繊維は外国へ輸出され、輸出先の紡績工場で糸になります。この輸送の際に綿繊維は圧縮されて運ばれるので、紡績工場ではまず湿度の高い室内で繊維を圧縮前の状態までふくらませます。開封後も繊維の中には不純物が混入しているので、混打綿という作業で繊維をほぐしてゴミを取り除きます。この工程後の円柱状の繊維の塊はラップ(lap)と呼ばれています。

3.コットン生地のつくりかた

1.混打綿(こんだめん):まず、圧縮して運び込まれた梱包をほどき、室内で24時間放置します。次に、室内の空気によって原綿が膨らみ、含まれている水分が自然に調整されます。その次に、原綿を機械に入れて解きほぐし、付着している葉や茎のカス、砂やチリなどのゴミを取り除きます。最後に均一の幅、厚さの板状にした「ラップ」を作ります。

2.梳綿(りゅうめん)(カード):できた「ラップ」には、まだ多くの繊維がもつれ合っているうえに、短い繊維、繊維の塊などが混ざっています。 機械に通して「ラップ」を梳きながらこれらを取り除き、繊維をある程度平行の状態にし、薄いシート状の「ウェブ」にします。 それを集約してローラーで圧縮すると、太い紐状の「カードスライバー」になって出てきます。

3.精梳綿(せいそめん)(コーマー):2の作業によって十分に取りきれなかった短い繊維やゴミなどを取り除き、繊維を平行に引き揃え、均斉な「コーマースライバー」を作ります。

4.練条(れんじょう):カードスライバー、コーマースライバーにはまだ、網の目のように太さのムラがあるため、6~8本のスライバーをひとつにまとめて引き伸ばし、ムラを取り除きながら繊維を平行にしていきます

5.粗紡(そぼう):4で作られたスライバーを粗紡機にかけてさらに引き伸ばし「撚り(より)」をかけて粗糸にし、ボビンに巻き取ります。

6. 精紡(せいぼう):粗糸をさらに引き伸ばしつつ決められた太さまで細くし、撚りをかけます。 撚りのかけかたによって糸の強度や風あい、肌ざわりなどが変わってきます。 これをボビンに巻き取り、糸の完成です。

コットンの質の違いとは

コットン生地の「質」を左右しているのは、綿花の種子から取れた段階での繊維の長さです。コットン繊維はその長さごとに、超長繊維、長繊維、中長繊維、中繊維、短繊維という風に区別されますが、繊維が長いものになるほど肌触りが滑らかで、光沢感のあるコットン生地を作ることができます。中でも繊維の長さが35㎜以上の超長繊維は、高級コットンの原料としてとても重宝されています。

また、先ほど紹介した紡績工場での精紡という工程で、粗糸をどれだけ強く撚っているかによっても、コットン生地の質感は変わってきます。精紡の時の撚り方が強いほど、強度がありしっかりとしたコットン生地が出来上がります。逆に撚り方がそれほど強くない場合は、やわらかい質感のコットン生地に仕上がります。

それでは、オーガニックコットンは従来のコットンと比べて質が高いのでしょうか。実は、オーガニックかどうかだけでは質にはそれほど違いはありません。ただし農薬や化学肥料を使わずに栽培した綿花からコットン繊維を取っているので、人体や環境に対しては負荷が少ない優しいコットンと言えるでしょう。

コットンの繊維の特徴

コットン繊維の大きな特徴といえば、その吸水性の高さと通気性の良さと言えるでしょう。例えばコットン生地から作られたTシャツは、汗をよく吸収してくれます。さらにその通気性によって熱を外側に逃がしてくれるので、清涼感のある着心地が保たれます。

それでは冬の寒い時期には困ってしまうような気もしますが、コットン繊維は保温性にもとても優れています。その秘密は、コットン繊維の構造に隠されています。コットン繊維は中心に空洞が通っているのですが、これによって熱が放出されにくくなっています。

ただし、コットン繊維にはデメリットも存在しています。コットン繊維には、水分を吸収した後に乾燥すると、以前より縮んでしまうという性質があります。衣類の洗濯を繰り返したらだんだんと縮んでいってしまったという経験をお持ちの方もいらっしゃるでしょう。コットン生地から作られた衣類ではこれが起こりやすいのです。また摩擦による毛羽立ちも起こりやすいのもデメリットです。コットン繊維は、着用や洗濯の繰り返しにはあまり強くないということになります。

このように、コットン繊維にはメリットもデメリットもいくつかあります。しかし、コットン生地から作られた衣類の着心地の良さは、とても大きなメリットです。そのため、アンダーウエアやTシャツ、ジーンズなど、幅広い衣類にコットン生地が使われています。

4.世界の高級コットン

 綿の品質を表す指標に繊維の長さがあります。一般的な長さは28mmほどなのですが、35mmを超える長さをもつ綿を特別に超長綿と呼んで区別しています。

シーアイランドコットン

 Sea Island Cotton(海島綿)は数あるコットンの中でも最高の品質のものとして知られています。この品種の原産地はカリブ海の西インド諸島ですが、イギリス植民地時代のアメリカのシーアイランド地方(現在のフロリダ~サウスカロライナ)で栽培されたことが名前の由来です。その柔らかさや光沢などの優れた特徴から、英国王室にも愛されていした。しかし、アメリカでの栽培は壊滅的な害虫被害により一時途絶え、今ではカリブ海を中心とした限られた地域で栽培される希少なコットンとなりました。

 有名なブランドでは、ジョンスメドレーがその春夏アイテムにシーアイランドコットンを使用しています。

エジプト綿

 エジプトのナイル川付近で栽培されるコットンもエジプト綿と呼ばれ有名です。特にGIZAと名の付くブランド綿はその生産工程にもこだわったオーガニックコットンとなっており、ISOなど様々な認証を得ています。GIZAは開発順に番号が与えられていて、現在はGIZA45という品種が一般的となっています。

スーピマコットン

 スーピマコットンはSuperier Pima(ピマを上回る)を省略したもので、米国スーピマ協会の承認を得たものだけが名乗ることのできるコットンです。日本ではユニクロからスーピマコットンを使用した商品が多く発表されています。