オーガニックコットンの誕生について調べてみました。単に、有機栽培の植物のことではなく、とても、大きな課題解決に向けた世界規模のプロジェクトのような取り組みです。
1.オーガニックコットンとは
『オーガニックコットンは、オーガニック農産物等の生産方法についての基準に従って2 ~ 3 年以上のオーガニック農産物等の生産の実践を経て、認証機関に認められた農地で、栽培に使われる農薬・肥料の厳格な基準を守って育てられた綿花のことです。オーガニックコットンは、紡績、織布、ニット、染色加工、縫製などの製造工程を経て最終製品となりますが、この全製造工程を通じて、オーガニック原料のトレーサビリティーと含有率がしっかりと確保され、化学薬品の使用による健康や環境的負荷を最小限に抑え、労働の安全や児童労働など社会的規範を守って製造したものを、オーガニックコットン製品といいます。』
[出典:NPO法人 日本オーガニックコットン協会]
要するに「オーガニックコットン」とは、とても厳しい基準をクリアした「有機栽培」による綿花のことと言えます。化学肥料や農薬に頼らずに、太陽や水・大地など自然の恵みを生かした栽培で生産された綿花のことです。
2.コットンをめぐる環境負荷の問題
コットン栽培は、環境負荷が大きい農産物として、注目を集めていますが、コットンによる私たち一人一人への恩恵もあることは十分理解されることでしょう。そこで、コットンをめぐる問題の現在を追ってみたいと思います。そして、気持ちよくコットン製品を使えるようになりたいと思います。
①水を大量に消費する問題
灌漑によって地下水をくみ上げることで収量を増やしていますが、地下水の枯渇が大きな問題です。コットンは全ての農産物の中で最も多くの水を必要とする作物と言われます。コットン畑の灌漑用水として大量の地下水と地表水が流用されるんです。コットン栽培に必要な水は、1㎏のコットン(1枚のTシャツと1本のジーンズに匹敵)= 20,000ℓ。1枚のTシャツ=2,700ℓこんな量の水がコットン栽培に使われていると言われています。例えば、コットン栽培により消えた海には、カザフスタンとウズベキスタンにまたがる世界で4番目に大きい塩湖、アラル海は、コットン栽培によりほぼ消えてしまいました。
一方、コットンはよく水を消費すると批判されていますが、事実は、コットンは他の多くの作物よりも水の有効利用の面で優れているという意見も言われてます。コットンは乾燥に非常に強く、暑く乾燥した気候を好むので、他の作物栽培に適していない世界中の乾燥地域でよく栽培されています。その上、コットン栽培に使われる水の大部分は、灌漑の水ではなく、雨水です。だから、すべての農業で使う水と同様、水は「借りている」に過ぎません。つまり、水は土や作物から蒸発し大気へ帰り、再び雨となって戻ってくるという循環をしているだけです。そして現在、農業科学は、水の保存と運用を最も重要な問題と考え、世界中で水資源の有効利用と保護に力を注いでいると言われています。その結果開発されたものとして、灌漑、耕運、土壌管理、精密農業などがあります。また、農業研究やバイオ技術では、現在進められている乾燥耐性の作物をもっと多く作り出すことに直接力を注いでいます。(現在進行形)
②薬剤を大量に使用する問題
1990年代には農薬使用がピークに達し、殺虫剤などは世界の使用量の20数%が綿の栽培に使われていると言われてます。その後、使用量は減らされてきましたが、それでも2008年の段階で、殺虫剤は15.7%も使われていますし、殺虫剤をはじめ落葉剤・除草剤などの農薬全体としては、6.8%を占めています。綿は農薬集約型農産物であるという意見も言われています。
一方、誤った批判の中には、コットンは農薬の最大の使用者であるという引用をしていると言われています。コットンは現在世界の農薬使用の25%を占めていると主張しているが、事実は7%以下であると言われています。25年前には、この発言は正当であったかもしれないが、2007年においては、世界中でコットン栽培のために販売された農薬は、全販売額の6.8%にすぎなかった。米国農務省によると、2007年には、わずか殺虫剤の0.8ポンド、除草剤の2.6ポンド、収穫用農薬の1.8ポンド、殺菌剤の0.007ポンドが米国の綿作1エーカーに投入されたに過ぎないという資料もあります。米国の2007年の平均収穫量は、エーカー当たり871ポンドであったから、収穫されたコットン1ポンド当たりに投入された農薬総量は約0.1オンスということになる。重要なことは、バイオ技術や害虫耐性の作物の出現によって、米国では、農薬投入量は、過去25年間に50%以上減少していることであると言われています。
③生地加工に化学薬品を使用する問題
繊維中の農薬残留はコットンの問題点とはなっていないと言われています。第一に農薬は収穫前の一定期間は散布を禁止されており、繊維は国際機関によって農薬残留量が計測されています。第二に、原料から最終の衣料になるまで、コットン繊維は洗浄と精練の工程が繰り返され、繊維に触れるかもしれない農場の化学薬品を取り除いてしまう。したがって、仕上がったコットン衣料が人の肌に触れることによる残留農薬の危険性はないと言われています。しかし、収穫された綿を生地に加工する段階でも多くの漂白剤や染料などの薬品が必要になります。特にファストファッションの衣類を作る貧しい途上国では、そのような染料や薬品を含む汚水を処理する適切な施設が整っていません。毎年4~5万トンもの薬品まみれの汚水が周囲の川や海にそのまま流されていると言われています。
④児童の強制労働
コットン栽培がさかんな地域では児童強制労働が多く報告されています。(中国、インド、パキスタン、アメリカ、ブラジル、ウズベキスタン、トルコ等)収穫の時期には子供たちは学校へ行く事が禁止され強制的に働かされます。(政府が児童労働を認定している国もあります) 子供たちはほんのわずかな賃金(12時間の労働で100円程度)かもしくは無償で奴隷のように長時間働かされます。発展途上国による農業は限りなく農民の生活が犠牲になっていることもあげられます。
このように綿花の栽培の課題として、「小規模農家の低所得」「不安定な収入」「強制労働と児童労働」「土壌の枯渇」「価格の変動」「不確実な市場」があり、さらに気候変動は世界中の農業生産に影響を与え始めていて混乱は加速しています。生産量1位のインドと3位のアメリカでは、技術力・経済的な環境問題への取り組み負担などに大きな隔たりがあることが課題の核心かと思います。世界における持続可能な綿花・サステナブル・コットンを目指すには、技術力の格差を少なくする取り組みによって、私たちに心地よいコットンが届くことは間違いなさそうです。
[出典:一般財団法人 日本綿業振興会「コットンと環境」参照]
3.オーガニックコットンをおすすめする理由
オーガニックコットンをおすすめする理由は、「自然環境や栽培に携わる人にやさしい素材」としての取り組みだからです。
① 地球にも身体にも良い素材
普通のコットン栽培では、害虫駆除、落葉剤など、たくさんの化学肥料と農薬が使われています。つまり、綿花栽培をすると土壌や水質への環境負担がとても大きくなる可能性が高いと言われています。一方、オーガニックコットンは農薬と化学肥料を極力使わずに栽培するため、土壌や水質汚染が少なくなります。普通のコットンよりもオーガニックコットンの方が環境や(働く人たち)身体への悪影響が少なく、地球にも自分の身体にも良い素材だといえます。
② 人の安全や健康を守るオーガニックコットン
オーガニックコットンの栽培基準には、農薬や化学肥料を使わないことだけでなく、労働者の安全や健康・児童労働に関する規約も含まれています。オーガニックコットンの積極的な使用は、綿花栽培に携わる人々を守ることにもつながります。
4.コットン素材の特徴とメリット
コットン製品がお肌にやさしいのはなぜ?デメリットはないの?コットンは有機栽培でも、そうでなくてもお肌にやさしい素材です。コットンには以下のような特徴・メリットがあります。
- 保温性に優れている
- コットンは保温性に優れた素材です。コットンの繊維は中が空洞になっているため、熱が伝わりにくい・熱を逃しにくいという特徴があります。
- 吸湿性・通気性に優れている
- コットンは吸湿性・通気性に優れているため、汗をかいてもすぐに吸収し、肌を清潔に保つことができます。
- 保湿性に優れている
- コットンは保湿性の高い素材です。肌あたりがよく、なめらかな着ごこちを感じられます。
- 化学繊維に比べて肌触りがよく、皮膚への刺激が少ない
- コットンは肌触りがよく、皮膚への刺激が少ない素材です。化学繊維より繊維自体がやわらかく、繊維の端が尖っていないことに由来します。
コットンマスク開発に取り組んだ理由は、まさに、上記のようなメリットを感じたからです。そして更に、手紡ぎコットンになると、その特徴がもっと感じられるからです。そして、労働環境・地球環境の負荷についても、私たち一人一人が考えて使う大切さを感じました。
※コットン素材にデメリットはあるの?
「肌へのやさしさ」の観点では、コットン素材にデメリットはないと言っていいでしょう。吸湿性・通気性の高さから暑い時期でも不快になりにくく、また保温性・保湿性の高さから、乾燥しやすい寒い季節にも適しています。その上でデメリットを挙げるとするならば、いくつかの項目が考えられます。
- コットン100%の衣類は生地が伸びにくいため、窮屈に感じることがある
- 乾きにくいため、梅雨や冬の洗濯には気を遣う
など、多少のデメリットはありますが、肌にやさしいコットンは非常に優れた素材と言えます。 最近、関心が高まりつつあるサスティナブルファッションにオーガニックコットンを選んで、環境にやさしい取り組みをしてみましょう。
